納⾻堂・建築・モダン
S
ご住職からご連絡を頂いたのは、2021年の年末でしたね。最初のご提案が、翌年の3月半ば。そこから多少の足踏みはありましたが、順調に進み、いよいよ基本設計がまとまるところまできました。STARにお問い合わせいただいた経緯を教えていただけますか。
H
寺院の建物は、特殊なので妙蓮寺も、本堂や庫裡などは、お付き合いのある寺院専門の設計士さんにお願いしてきました。ただ今回、「納骨堂」を新たにつくるにあたっては、いろいろと思うところがありました。遺骨を納めるという行為について、もっと丁寧に考えたい。何よりも、私自身が骨を納めたいと思える納骨堂を、どなたか設計してもらえないだろうかと考えていました。そして「納骨堂・建築・モダン」というキーワードからネット検索をしたところ、STARさんの名前を見つけたのです。これまでに寺院・
納骨堂設計の実績があり、リゾートホテルなどを手がけておられる事例をいくつか拝見したときに、私の中の理想とつながったといいますか。東京の設計事務所が、遠く離れた大分のお寺の依頼を受けてくれるだろうかと、少し不安はありましたが、HPからご連絡させていただいたところ、すぐに佐竹さんからご連絡いただきましたね。
S
これからの「納骨堂」は、亡くなられた方、およびご遺族が、私たちが手がけるホテル旅館のようにリラックスできるというあり方が望ましいなと考えていました。そのあたりをご共感いただいたのが嬉しくて、ご住職とははじめから意気投合しました。改めて、当社にご依頼いただいた決め手というのは、このあたりになりますか。
H
その通りです。納骨堂というと、これまではお墓を建てられない方、何かしら事情がある方のための、お墓の副次的な位置付けで考えられてきたことが多かったように思います。新しく再建する当山(妙蓮寺)の納骨堂はそんなイメージを変えたいという思いが以前からありました。しっかりとしたコンセプトを持った建物の中で、明るく、風雨を気にせず、冷暖房完備で、バリアフリー。安全で快適に、ご遺族が仏様となられた方々と安心して悲しみも喜びも語り合えるような場所をつくりたいと。
S
これからはむしろ納骨堂の方が多くの方々の事情に適しているのではないか、というご提案ができたら。ご住職とは、そんなお話をしましたね。
先立たれた方は、仏様になる
H
お釈迦様は死の直前、嘆き悲しむお弟子さんたちに向かって、「そんなに悲しむことはない。これまで私が語ってきたように、姿かたちがあるものはすべて崩れていく。肉体は消えても、教えのあるところに、私はいつもある」と言い残し、荼毘に付されました。お釈迦様の遺骨は、8つの国王が国に持ち帰って仏塔を建て、それぞれに納めたとされています。この仏塔が、当時の人々にとって、お釈迦様を偲んで集まる場所になったのです。
S
なるほど、つまりは、その遺骨を納めた仏塔を中心にして、み教えが広がったのが仏教なのですね。
H
その通りです。今は樹木葬、散骨葬など、さまざまな弔い方もありますが、やはりお骨を納める場所がみ教えが聞けるお寺にあることで、子孫代々にわたって安心して集まることができ、仏縁が続くという感覚がありますね。また、東日本大震災で、10年ぶりに遺骨が見つかった方のお父さんが、「お帰り」と涙を流して抱いておられる姿をニュースで拝見しました。やはりお骨というものは軽視すべきものではなくて、その方が生きていた証でもあり、死してなおその方と繋がれる縁(よすが)であると強く思いました。それは安心して命を想う大切な機会となり、死の解決を説いた仏教を聞く仏縁となっていくと思うのです。
S
日本人には、お骨を見るまでは、死を受け入れることができないという感覚がありますよね。「お帰り」と涙を流したお父さんの気持ちが、よく理解できます。
H
遺骨を縁として、み教えを聞いていける場所。それがお寺の境内に納骨堂が建つ意味だと思います。時空を超えて、2500年前の伝承を今に再現するが如く、仏教に興味がなかった方々も、お寺の新しい納骨堂にみんなが集い、ここをきっかけとしてみ教えを聞く。そして、やがて先立たれた大切な方を仏様と仰ぎ、また会える命であることを想う。それが実は先立った方々の願いにかなう・・・そんな思いで、今回の再建を計画いたしました。
S
ご住職は、亡くなられた方のことを「仏様」とおっしゃいますね。このあたりを、お教えいただけますか?
H
はい、私たちの浄土真宗は、生前にみ教えに出遇えた者は、命を終えたたちどころに浄土に生まれて仏様に成らせて頂くというみ教えです。「仏」とは、古代インド語でブッダ。直訳すると、「真理に目覚めた者」という意味です。よく亡くなられた方に対し、「安らかにお眠りください」という言い方を聞きます。心情的な理解はできますが、み教えからするとこの度は仏様という真理に目覚めた者として、今後は遺された方々をさとりへと導いていく「活動僧」となって、仏様の働きをされていくと示されているのです。実はこの連続性がプラバ、光明の働きなのです。光というものは、空間的無限、一瞬でどこへでも至り届く。いわば、いつでもどこでも一緒にいるんだよ、というメッセージが、光明(プラバ)でもあるのです。
S
ご家族や友人の方々が、「そうか、あの人は亡くなって消えてしまったのではなく、もう仏様のはたらき(プラバ)となって、いつでも私たちを見守ってくれているんだ」という気持ちを持って、集うことができるということですね。
H
まさしく、言葉の通り、光に溢れ、光に包まれたあたたかな明るい納骨堂です。今回設計いただいた「静寂の庭・瞑想ラウンジ」では、まさに訪れる方々にそのようにお感じいただいて、足を止めて先立たれた方やご自身の命に想いを馳せるという、そんな場所になると思うのです。
teamSTAR ®だからできること
S
暗くて殺風景な倉庫のような納骨堂では、訪れる方々の気持ちもどこか沈んでしまいますよね。明るくて優しい、そんな納骨堂ならば、これまでの方が、これからの方々とつながる余地を見出す場所として、旅館、ホテルのようなくつろぎを得られる。携わるにつれて、ご住職の思いをよりつよく実感する仕事です。
H
スタイリッシュなリゾートホテルなども手がけていらっしゃる方が、こうした納骨堂づくりにも意欲を示してくださるのは、とても新鮮であり、期待感が芽生えましたね。
S
ありがとうございます。実際に私たちをお選びいただいて、こうして納骨堂を一緒に作っていくなかで、どのような感想を持たれましたか?
H
私はこうした建築には素人ですし、業界のルールもよくわからないまま、いきなりのお問い合わせをしてしまいましたので、不安もありました。ところが、ファーストコンタクトで、佐竹さんが「どんなかたちであってもいいので、想い、気持ちをお知らせください」と丁寧に聞いてくださったことが、まず安心感につながりました。東京、大分という距離感も、zoomというツールで打ち合わせができたことで解消され、とてもよかったと思います。日に日に不安は薄れ、楽しみに変わっていきました。
S
電話だけでは伝わらないことも、お顔を見ながらお話しすると、安心に繋がりますよね。
H
また、法律のことにも非常に詳しくて、そこは本当に助かりました。認許可や墓園・納骨堂開発コンサルタントの成世南海堂さんともビジネスパートナーを組み、チームでされているおかげで、当方には情報がなかった部分もきっちりと押さえていただいて。また、素晴らしいCG画像での完成予想図のおかげで、ご門徒のみなさま、金融機関の方々も気持ちが一つになっていくのが嬉しかったです。
それに、昨今の物価高にあって金額や設計に様々な調整が必要になった際も、teamSTARの方々がチームとして智慧を出し合ってくださり、妙案を導き出してくださることは、贅沢で心強いものを感じています。